コラム

 

質問

肩の痛みを引き起こす「腱板断裂」とは?

回答

肩の痛みを引き起こす病気としては、代表的なものに四十肩・五十肩と言われている「肩関節周囲炎」、肩の関節の袋が固くなって肩の挙上ができなくなる「凍結肩(Frozen Shoulder)」、インナーマッスルが痛んでいる状態である「腱板断裂」が知られています。

今回は、日常よく遭遇する「腱板断裂」についてお話しします。

肩関節は上腕骨と肩甲骨からなり、上腕骨の骨頭が肩甲骨のくぼみ(関節窩)にはまり込む構造になっていて、表面の三角筋とインナーマッスル(腱板)が協調することで働くという仕組みです。

腱板断裂とは、その上腕の骨と肩甲骨とをつなぐインナーマッスル(腱)が切れてしまう状態です。

腱板断裂の背景には、腱板が骨と骨(肩峰と上腕骨頭)にはさまれているという解剖学的関係と、腱板の老化が考えられます。明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因がなく、日常生活動作の中で断裂が起きることが多いとされています。

四十肩・五十肩は自然に軽快することがほとんどですが、腱板断裂では肩に力が入りにくく痛みがいつまでも続くことがあり、適切な治療が必要となります。

その治療においては、疼痛コントロールと運動療法からなる保存療法から始めます。内服や、関節内に注射を入れて炎症や痛みをコントロールします。また残存腱板の機能訓練によって運動に障害が残らないよう、リハビリなどを行なっていきます。

保存療法で肩関節痛と運動障害が治らない場合は手術を行ないます。手術には関節鏡視下手術と通常手術(直視下手術)の方法があり、関節鏡視下手術は低侵襲で手術後の痛みも少ないため普及してきていますが、腱板が大きく断裂して機能の改善が見込めない場合には、痛んだ箇所を人工物に換える人工肩関節置換術も検討します。

人工関節は、関節の痛んだ部分を人工物に置き換えることで痛みを緩和するだけでなく、活動性の向上が期待できます。なお、術後に無理な動きをするとずれてしまう恐れがあるため、体の使い方についての指導なども行っています。詳しくは専門の医師にご相談ください。

「月刊タウン情報おかやま(2023年12月号)より」