再生医療
(PRP療法)

 

PRPとは

PRPはPlatelet-Rich Plasmaを略した名称で、日本語では多血小板血漿と言います。PRPは血液から血小板を濃縮することにより、血小板に含まれる活性の高い成長因子を多く含みます。血小板は血液1μLに10~40万(個)含まれて、血液全体に占める割合は1%以下と言われています。血小板は、血管が傷ついたとき、傷ついた場所に集まって血を固める働きがあります。その際、血小板から多量の成長因子が放出されます。この成長因子は、傷ついた組織の修復を促します。
血小板の放出する成長因子の効果により、組織の修復が早まったり、治りにくい組織の修復が期待されます。この効果を利用する治療方法がPRP治療です。PRPには組織修復を始める働きはありますが、どのような組織を作るか指示する働きはありません。そのため、PRP治療の後、治療効果を期待する組織の種類によって、後療法(PRP治療の後に行う運動など)が変わります。

組織を修復するために必要なもの

膝、肘、肩などの変形性関節症の痛みは、組織のダメージが修復されないために起こります。関節の組織、その中でも特に軟骨を修復することができれば変形性関節症による痛みは改善されます。組織を修復するためには、以下の3つの要素が揃う必要があります。
 ①細胞:組織を構成し、維持する働きをもつもの。
 ②足場:立体構造を作るもの。コラーゲン、ヒアルロン酸など。
 ③液性成分:細胞に刺激を与えるもの。成長因子、サイトカインなど。
これら3つの要素に加え、
 ④物理的刺激
を加えることにより、正しい機能を持った関節、筋肉、腱などになることが期待されます。これが不足すると硬い組織ができてしまい、痛みの元になることもあります。

治療の目的

PRP治療は、ご自身のPRPを患部に投与することにより、患部の疼痛の軽減や、損傷した組織の修復を目的とする治療です。

治療の理論

以下の理論に則って、治療を行います。
・血小板は、傷の修復を担当する、血液成分の1つです。
・血小板を濃縮し、それに含まれる成長因子の活性を保ったまま患部に投与すると、新しい血管が作られたり、細胞が集まってきたり、足場と呼ばれる立体構造の基礎が作られるなど、新しい組織を作る上で必要なものが患部に集まってきます*。
・集まった細胞や足場に対して、物理的な負荷(圧力をかける、伸び縮みさせる、こするなど)を加えることにより、その場所に必要な強度や物性を持った組織が作られます*。
・PRPを用いた臨床研究等も数多く実施されています。一例として、膝関節痛患者6名の血液からPRPを作成、1週間おきに計3回、関節内に投与した報告があります*1)。この報告ではPRPを注射した時点及び経過観察期間中(経過観察期間:治療終了後5ヶ月1名、4ヶ月1名、3ヶ月2名、1ヶ月2名)の有害事象と、疼痛が半減した患者の割合を評価しました。その結果、6名に生じた有害事象は、PRPの注射直後に起こり、注射部位での疼痛、皮下出血及び膝のこわばりが生じましたが、数日で自然軽快しました。その一方で、治療終了1ヶ月後には、6名中5名において疼痛が半減しました。
*期待される効果の推定です。
*1)青戸克哉 他:日本人変形性膝関節症患者に対する多血小板血漿関節内注射治療の安全性と有効性.日整会誌 89:S734(2015)

治療の長所・メリット

・自己組織由来なのでアレルギーが起こりにくい。
・日帰りでの処置が可能である。
・治療後から普段の生活が可能である。
・治療手技が簡単で、治療痕が残りにくい。
・何度でも受けることができる。
・超急性期、急性期、亜急性期、慢性期のどのタイミングでも受けることができる。
・関節、筋、腱、靭帯、骨など運動器の大半に対して治療を行うことが可能である。

治療の短所・デメリット

・変形性関節症を根本から治す治療ではない。
・数日間、炎症(痛み、熱感、赤み、腫れ)を伴う。
・一度に広範囲の治療を行った場合、硬さ・しこりが残ることがある。
・投与箇所、採血部に感染症が起こる可能性がある。
・適切な物理負荷を加えないと、治療部位が硬くなり長期的な痛みの元になる可能性がある。
・社会保険・国民健康保険など医療制度上の保険で受けることができない。

治療の方法

治療は日帰りで終わります。
①患者さまの血液を治療に適した量だけ取ります。
②血液を遠心機で数回遠心してPRPを作製します。
③PRPを注射器で関節に注射します。

・当日からストレッチを開始します。痛みを強く感じるときは適宜鎮痛剤を服用してください。
・1週間後からトレーニングを開始します。
・治療の経過観察のため、1か月後、3か月後、6か月後にご来院ください。ご来院できない場合は、予めご了承いただいた上で、当院よりアンケート用紙を送らせていただきます。ご記入のうえご返送くださいますようご協力よろしくお願いいたします。

治療後の注意点

・痛みを強く感じている間に安静にし過ぎてしまうと、治療部位が硬くなり長期的な痛みの元になる可能性があります。可能な限り、治療直後よりストレッチなど、しっかりと動かすためのトレーニングが必須です。
・投与部位は翌日から浴槽につけていただいて大丈夫です。
・投与後、数日間は血流の良くなる活動(長時間の入浴、サウナ、運動、飲酒など)を行うことで、治療に伴う痛みが強くなることがあります。ただし、この痛みが強くなったからと言って、治療効果に差はありません。
・関節は細菌に弱いので、清潔に保つよう心掛けて下さい。
・注入した部位に感染がないか、健康状態に問題が起きていないかを確認するために、ご来院をお願いいたします。遠方の患者さまでご来院が難しい場合、当院より紹介状をお出ししますので、直ちに近くのお医者さまに受診いただきますようお願いいたします。
・何か不具合が生じた場合は直ちに当院にご連絡ください。自己判断での処置や他院での治療に関しては責任を負いかねますので予めご了承ください。
・この他、もしも何らかの不調や気になる症状がみられた時は、遠慮なくお申し出ください。必要に応じて、ご説明又は医学的な対応、協議をさせていただきます。また、何か新たな安全性の情報などが分かった場合は、すぐにお知らせします。

他の治療法との比較

変形性関節症の痛みに対する代表的な治療法としてヒアルロン酸注入があります。ヒアルロン酸は関節腔内に注入されるとクッションのような働きをし、痛みを和らげる効果があります。PRP治療との直接比較による効果の優劣は不明ですが、以下のような違いがあります。
ヒアルロン酸注入は、ヒアルロン酸が関節腔内から消えていくため(3日で消失*)、標準的な治療として1週間毎に連続5回注入する必要があります。ヒアルロン酸の効果は6か月程度持続します。
PRP治療は、PRPが何日でなくなるかについてのデータはありませんが、おおむね1回の治療で2ヶ月後から治療効果が感じられるようになり、6~12ヶ月効果が持続します。
なお、いずれの治療も効果のあらわれ方や持続期間には個人差があります。

ヒアルロン酸注入とPRP治療はいずれも関節腔内注入で、治療後に起こるリスク(注入部位の痛み、腫れなど)はほとんど変わりません。
ヒアルロン酸は医薬品として承認されており、品質管理された安全性の高いものです。しかし、アレルギー反応などの可能性は完全には否定できません。
PRP治療は、患者さま自身の血液から製造するため、患者様ご自身の体調などの理由により品質がばらつく可能性があります。その一方で、患者さま自身の血液から製造するため、アレルギー反応などの可能性は極めて低いと考えられます。
*アルツ関節注25mg添付文書より

表:他の治療法との比較表
  PRP ヒアルロン酸注入
概要 関節腔内に投与することで、損傷した患部の疼痛を和らげる効果がある。また、組織を修復する効果が期待される。 ヒアルロン酸は関節腔内に注入されるとクッションのような働きをし、痛みを和らげる効果がある。
効果持続期間 6~12ヶ月程 6ヶ月程
治療後のリスク
(注入部位の痛
み、腫れなど)
リスクはほとんど変わらない
品質の安全性 PRPは患者さま自身の血液から製造するため、患者さまごとに品質がばらつく可能性がある 医薬品として承認されており、品質は安定している
アレルギーの
可能性
自家移植のため、極めて低い 品質管理された安全性の高いものだが、アレルギー反応などの可能性を完全には否定できない

費用について

<関節内へのPRP治療>    適応:膝・肩・股関節・足
  APS GPSⅢ 一般的なPRP
分類 次世代PRP LR-PRP
(leucocyte rich PRP)
LP-PRP
(leucocyte poor PRP)
投与回数 1回 1回 3~4回
痛みの抑制
持続期間
12~24ヶ月 ~6ヶ月 ~4ヶ月
炎症抑制成分
(抗炎症性サイトカイン)
成長因子
(軟骨成長保護)
関節内環境改善
治療費 約30万円 約15万円  

※当院では、APS,GPSⅢシステムを採用しています。

<筋肉・腱・靭帯へのPRP治療>
適応 各部所の筋肉・靭帯損傷・肘・足 など
分類 GPSⅢ
治療費 約7万円~(部位により異なります)

医 師 紹 介

阿部 信寛(非常勤医師)
専門医・
指導医 
日本整形外科学会専門医・リウマチ医・脊椎脊髄病医・認定スポーツ医・運動器リハビリテーション医/日本リウマチ財団リウマチ登録医/日本体育協会公認スポーツドクター/日本医師会認定健康スポーツ医/医学博士/臨床修練指導医
専門領域
得意分野
スポーツ外傷(肩・肘・股・膝・足関節の関節鏡視下低侵襲手術)/関節外科(人工関節)
経歴 平成2年 岡山大学卒業
河合 亮
専門分野 整形外科(肩・膝・股関節・骨折・一般外傷)
経歴 平成20年3月  東京医科大学卒業
平成20年4月  尾道市立市民病院整形外科勤務
平成25年4月  水島中央病院整形外科勤務
平成29年4月  新倉敷メディカルスクエア整形外科
資格 日本整形外科学会認定専門医
日本医師会認定産業医
身体障害者福祉法指定医(肢体不自由)
難病指定医
リバース型人工肩関節資格修了
緩和ケア研修会修了
所属学会 日本東洋医学学会
日本リハビリテーション学会
日本リウマチ学会
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
日本肩関節学会
日本骨折治療学会
河合 知則(医学博士)
専門分野 消化器、肛門、漢方処方
経歴 昭和49年3月 東京医科大学卒業
昭和49年4月 岡山大学大学院入学
昭和49年4月 岡山大学医学部第一外科入局
昭和54年3月 岡山大学医学部医学博士授与
昭和60年2月 新倉敷胃腸肛門外科開業
資格 日本東洋医学会専門医指導医
日本東洋医学会岡山支部会理事
日本外科学会専門医
日本大腸肛門病学会専門医
日本内視鏡学会専門医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本乳癌検診担当医
緩和ケア研修会修了
河合 毅
専門分野 消化器外科(肝臓・胆嚢・膵臓・胃・大腸)
経歴 平成10年3月   岡山白陵高校卒業
平成16年3月   日本医科大学卒業
平成16年~18年  岡山大学医学部にて初期研修
平成19年~21年  津山中央病院外科
平成21年~24年  姫路日赤病院消化器外科
平成24年4月   岡山大学第一外科大学院入学(肝胆膵・移植グループ、大腸グループ)
資格 日本外科学会専門医
日本医師会認定産業医
所属学会 日本消化器外科学会
肝胆膵外科学会
内視鏡外科学会
大腸肛門外科学会
内視鏡学会
日本東洋医学会